アルミ溶接の歪み対策

こちらの記事は、アルミ溶接の歪み対策についての内容になります。
『アルミを溶接すると歪んでしまって困っている』という方の役に立てれば嬉しいです。
アルミは金属の中でも溶接が難しい材質の一つです。
この記事では、
①溶接加工では何故歪みが発生してしまうのか
②アルミ溶接の難しい理由とは
③歪み対策
まとめ
について書き記しております。
参考までにご覧いただけますと幸いです。

溶接加工では何故歪みが発生してしまうのか

金属を溶接すると何故歪みが発生するのでしょうか。
それは、母材を熱で接合させる際に母材が熱で溶けて膨張したり冷えて収縮したりする為です。
均一に膨張したり収縮すれば歪みは発生しませんが、溶接は局部的に熱を加え、接合部を溶融する為、対策を講じなければ溶接方法に関わらずほとんどの確率で溶接の歪みは発生します。
薄い金属材ではより溶接熱が伝わりやすく歪みが発生しやすくなってしまいます。
製品の中には外観上の見栄えや寸法精度を求められることが多くあると思います。溶接の歪みによって品質基準を満たせなくなる場合もある為、溶接作業はできるだけ歪みを発生させないように対策を講じる必要があります。

アルミ溶接の難しい理由とは

① 溶接で歪みが発生する理由は母材に必要以上に熱を加えてしまうことが主な理由です。
金属の中でもアルミは熱伝導率が高く熱によって歪みやすい金属といえるでしょう。熱伝導率とは熱の伝わりやすさを示す指標で、材質によって値が違います。アルミの熱伝導率はステンレスの2倍以上の為、熱を加えた際の歪みが大きくなりやすいです。

②アルミの融点は他の金属と比べると低い為、熱によって母材が溶け落ちてしまうこともあります。鉄の融点約1500℃、ステンレスは約1400℃に比べアルミは約660℃です。融点が低いと当然ではありますが熱によって溶けやすく、母材がすぐに溶け落ちます。

③ アルミは、溶接をする際に酸化しやすい性質を持っています。酸化する事により固い酸化皮膜が生成されてしまい、溶接の邪魔となります。固い酸化皮膜とは、融点が約2000℃とアルミ自体よりも1300℃以上高く、皮膜を溶かすのは容易ではありません。

④ ブローホールが発生しやすい事も溶接を難しくしている要因です。ブローホールとは溶接金属内にガスが発生する事によってできる空洞のことです。ブローホールが発生してしまうと溶接個所の強度が落ちてしまい、脆くなってしまいます。

歪み対策

溶接歪みの対策はいくつかあります。まずは上記でも述べたように、熱を加えすぎてしまう事を防止する方法です。それは熱を逃がすと言う事です。溶接の際に熱が一部に集中しすぎないようにする為です。
具体的には母材の下に熱伝導率の良いものを敷く・溶接部位の下にアルゴンガスを通すなど熱を逃がす方法があります。次に歪みが発生しないように治具で固定する方法です。治具で固定する事により物理的に歪みを抑え込みます。
問題点としては専用の治具や道具等を用意する必要があり、初期費用が掛かってしまいます。また、歪みが発生した後の対策としては、変形部分をハンマーなどで叩く、プレスをかけて矯正をするなど修正していく方法がありますが、一つひとつ手間がかかり工数がかかってします為、量産には不向きです。
製品の形状や要求品質、作業員の技量等を加味して最善の対策をする必要があります。

まとめ

アルミ溶接の歪みの原因としては
・熱伝導率が高く歪みやすい。
・融点が低く溶けやすい。
上記が主な原因として挙げられます。
歪み対策としては
・熱を一部に集中させないように逃がす。
・治具等で物理的に歪みを抑え込む。
上記が主な対策として挙げられます。
様々な要因からアルミの溶接には高い技術力や経験が求められることがわかります。
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